ターゲティングとは、特定の市場に的を絞ることターゲティングとは、市場における特定のセグメントに分類した領域に対して、的を絞ることをいいます。平たく言えば、標的はどこか?ということです。

ごくシンプルな内容です。しかしながら、どこを標的にするかが経営を左右する大きな問題なのです。
【市場調査】の事例では、このターゲティングを勘に頼った結果、間違ってしまいました。)
なぜなら、商品・サービスを販売・提供するには、必ず市場があり、競合企業が存在するからです。

今回は、「ターゲティング」をテーマに展開しますが、「市場調査」、「ポジショニング」も合わせてお読みいただくと、深くご理解いただけるのではないしょうか。

では、2つのケーススタディ(事例)を元に、ターゲティングについてご説明いたします。
1つは、新規開店する洋菓子店(ケーキ屋)のケース。もう1つは、業績が伸び悩む不動産業(貸しオフィス)の打開策です。


新規で開店を考えている洋菓子店A店のケースで、ターゲティングを考えてみます。

A店は洋菓子店で、都市部の有名なパティスリーショップで10年間修行を積んで、今回独立するオーナーの店舗です。腕に自信があり、意気込みはかなりのものです。
A店は、さっそく新規開店の候補地を不動産屋と相談した結果、3つの候補地があがってきました。

候補地の情報は下記の表の通りで、一見どれも良さそうに見えます。人通りの多い絶好のロケーションで、
2つの候補地は角地です。A店のオーナーはすぐに3つの候補地が気に入りました。

  候補1 候補2 候補3
地域 再開発地区指定の郊外都市 都市部 活発な地方都市
人口 80万人 220万人 125万人
立地 駅前の角地 広場から見えるビルの1階 メインストリートの角地
人通り 多い(若い夫婦や子供) かなり多い(学生やOL) 多い
特徴 近年の開発は目覚しい 毎日若者で溢れている 落ち着いた雰囲気

まずは市場調査から
A店のオーナーは修行時代に、新規開店には市場調査が欠かせないことを学んでいたので、自分で調べてみることにしました。候補1は、再開発している郊外型の街で若い夫婦と子供をよく見かけます。また、候補2は、都市であり、日々学生やOLなどで賑わっています。さらに候補3では、歴史ある地方都市で、落ち着いた雰囲気の中、地元商店なども未だに多く残っている地区です。
調べた結果は以下の通りです。

  候補1 候補2 候補3
地域 再開発地区指定の郊外都市 都市部 活発な地方都市
人口 分布 女性/20歳未満 23% 20% 7%
女性/20〜34歳 38% 29% 19%
女性/35〜49歳 24% 26% 33%
女性/50歳以上 15% 26% 41%
世帯収入(平均) 600万円 600万円 1000万円
主な交通機関 自家用車 電車 電車、バス
競合店舗数 20店舗 60店舗 40店舗
※人口分布は女性のみ掲載しており100%表示にしています。

A店のオーナーは、上記の結果からどの候補地を選択するべきでしょうか?候補地はどれも魅力的です。
しかし、それぞれの地区においてメインのお客様になってくれそうな世代は違いそうです。
候補1なら、若い主婦層。候補2なら、学生やOLなど。候補3なら、子育ても一段落した主婦層。これらが、3候補地のお客様像として浮かんできます。

最もお客様となる層の人口を計算する
そこで、各候補地の人口にメインとなるお客様層の割合をかけてみることにしました。
【候補1】人口80万人×38%(女性/20〜34歳)×1/2=152,000人
【候補2】人口220万人×29%(女性/20〜34歳)×1/2=319,000人
【候補3】人口125万人×41%(女性/50歳以上)×1/2=256,250人
こうして見ると、メインとなるお客様の数が多いのは、【候補2】の都市ということになります。

競合店舗を考慮する
しかし、競合店舗も存在していますので、今度はその店舗数で割ってみます。
【候補1】152,000人÷20店舗=7,600人
【候補2】319,000人÷60店舗=5,317人
【候補3】256,250人÷40店舗=6,406人
今度は、【候補1】の郊外都市が最も良さそうな結果がでました。競合店舗が人口の割りに少ないことが分かります。再開発地区なので、競合店舗もまだ参入していないのでしょう。

世帯年収を考慮する
しかしA店のオーナーは、洋菓子が嗜好品であることを踏まえ、世帯平均年収も考慮に入れることにしました。世代によって、年収も嗜好品に費やす金額の比率は異なりますが、ここでは平均値を使用して計算してみます。
【候補1】7,600人×6=45,600
【候補2】5,317人×6=31,902
【候補3】6,406人×10=64,060
※平均年収を相対化し、600万円=6、1000万円=10とした。
すると今回は、【候補3】の地方都市が一番となりました。金額にゆとりのある世代が多く、競合店舗も少ない【候補3】は、最も期待値の高い候補地となりました。


ターゲットを確定させる
ケーススタディ(1) 洋菓子店(ケーキ屋)【候補1】は今後の成長性を考慮すれば確かに魅力的ではあるものの、半面、競合の参入が今後多く予測されます。また【候補2】も競合が多い地域です。さらには、双方共に若い世代がターゲットとなるため、特徴の一つである興味の移り変わりの早さから却下しました。

結果、A店オーナーは、修行時代から高齢の世代に人気のあるお菓子の開発を担当していたことや、【候補3】はギフト商品などの商品も販売機会が多いと考え、【候補3】に出店することに決めました。

今回のケースで言えば、調査結果から一連の分類分けが「セグメンテーション」であり、候補地選びが「ターゲティング」と呼ばれているものです。
※今回のケースはあくまで事例です。


ケーススタディ(2) 不動産業(貸しオフィス)

ケース(2)では、貸しオフィスを行っている不動産業B社で考えてみます。

B社は、都市部に自社所有のビルを6棟保有しており、それぞれの築年数と空室率は右記の通りです。

B社の保有物件は、全てオフィスビルで、築20〜30年経過するビルが4棟とまだ2〜3年のビルが2棟です。築浅の2棟は順調に埋まっていますが、築年数の経っている4棟には、空きが目立ちます。放っておくと、ますます空きが出て、不採算は目に見えています。現状を打開するために、ターゲットの見直しを行いました。
※表における「許容人数」は、ワンフロアでの収納人数を表します。


市場調査を行う
B社は、問題となっている4棟をどうにかしないといけないと考え、賃貸オフィスに関する情報を収集しました(市場調査)。結果は以下の通りです。
ケーススタディ(2) 不動産業(貸しオフィス)

上記のような結果の他には、
・賃貸料が平均で、横ばいもしくは上昇傾向にあること
・新築物件へのニーズが高いこと
・郊外へ移転する企業も少なくない
・オフィスリノベーションが増えてきている
・レンタルオフィス市場が拡大してきている
・小規模ビル、築年数が古いビルほど、空室率が高い

なども分かりました。


市場調査結果をもとに、分類を行う(セグメンテーション)
ケーススタディ(2) 不動産業(貸しオフィス)まずは状況を整理します。

■オフィスの面積で分類−大型ビル(300名以上)、中型ビル(50〜300名未満)、小型ビル(50名未満)に、分類が可能
■築年数で分類−築5年未満のビル、築年数5〜15年のビル、築15年以上のビルで分類が可能
■事業所数の増加率<オフィス数の増加率 →益々の不均衡へ
■小規模ビル、築年数が古いビルほど、空室率が高い

以上のことから、築年数と規模の2つの軸で分類が可能であることが分かり、下記図のような格好で収益性と空室率に相関関係がありそうです。


標的を決める(ターゲティング)
B社はこれらの結果から築年数の古い4棟について、状況を改善しないことには、いくら販売促進を頑張っても、競争が激化するだけで、根本的に解決できない状況だと判断しました。

そこでB社は、過去の堅実的な経営のおかげで資本があったため、4棟を順次リノベーション(改築)することにしました。
上記図のA地点からB地点へと状態を移すことが目的でした。

またB社は、調査結果に出ている「レンタルオフィス市場の拡大」に注目しました。ワンフロアを貸すのではなく、いくつもの小間に区分して小さなスペースを貸すレンタルオフィスは起業件数の多い都市部で需要が伸びており、利益率も高いのです。また、大規模ビルは参入が難しい点も、小型ビルの生きていく道のように思えました。

事業所数の増加以上にオフィス数が増えている点や、空室率が高いことを考慮し、ワンフロアを分散して貸すことで空室へのリスクヘッジとしたのです。起業件数が落ちていないことや、レンタルオフィス市場の拡大が決断を後押ししました。

ターゲット(標的)は、ベンチャー起業であり、レンタルオフィス市場に参入することに決めました。
※今回のケースはあくまで事例です。

まとめ以上2つの事例に見られるように、ターゲティングは、市場調査で分かった内容をいくつかに分類(セグメンテーション)した上で、「どこを標的にするか?」を決めることです。
これは企業の方針を左右する、非常に大切な決断です。
リサーチ会社が沢山存在しているのも、重要な決断を支える情報を細かく調べる必要があるからです。

では、調査した情報を元に、どのようにセグメント化し、ターゲットを絞るのか?
ケーススタディでもご紹介しましたが、セグメント化は「消費行動の違いが、何の属性と関係が深いのか?」を知ることが重要です。
またターゲティングは、自社の強みをしっかりと踏まえた上で、最も自社に適した領域(市場)を選択することが重要です。

この2つをしっかりと守ることで、自社商品を本当に求めているターゲットに提供することができるのです。専門書以外の一般のビジネス書でも取り上げられていることがありますので、ぜひ参考にしてみてください。

[補足]ホームページでもターゲティングは重要インターネットでも、ターゲティングは重要です。
インターネットの世界では、「キーワード毎」に市場が存在しています。

例えば、”かに”をインターネットで販売するにしても、「かに」と検索する人もいれば、「カニ」や「蟹」と検索する人もいます。これらは、同じ”かに”でも、検索結果のページ内容が異なるため、別々の”かに”を求めている人が、各々の検索結果ページに行き着きます。

検索している人の数やもしかしたら嗜好も違うかも知れません。様々な数値を調べた上で、ライバルとなる店舗数を比較して、SEO対策を行うキーワード(市場)を決めるべきなのです。